記憶の本棚

・読書感想を中心に映像作品へのコメントなども。

ロードス島攻防記/塩野七生

・地中海三部作の第2作。

・コンスタンティノープル陥落から70年を経て、聖ヨハネ騎士団が根拠とするロードス島にトルコの手が伸びる。

・歴史的事実を、歴史資料を基に再構築した登場人物の動きで彩るおなじみの手法です。もっとも、前作よりは説明臭が漂う台詞を与えることになったように思えます。これは使用できる資料が少ない中で、仕方がなかったかなぁ。

・男Aと男Bの関係を設定しているのですが、同時に男Aには女Aも関わる。両刀かい?これって塩野さん、自分も参加したかったのか?したかったんだろうなー。女Aの最期は格好いいもんねぇ。

・というわけで、本作の見所のひとつは、ヒッチコックばりに作中に現れる作者投影キャラだったりします。

・物語的に、登場し、描写される必然性は全然ないのですが(^^)。

イギリス交際考/木村治美

・1979年に刊行された本。

・昭和7年(1932年)生まれの著者の、外国生活の体験を元にしたエッセイ集です。。

・これが、文体が上品で、とても気持ちいい。

・「・・・でしょう」「・・・ものです」「・・・たのです」。

文体も時代を映す、ということなのでしょう。幼いころに親しんだ偉人伝とか少年向け名作翻案モノとかは、こういう丁寧な文体だったなぁ、と懐かしく感じました。

・外国経験とエッセイ、という点では塩野七生さんも昭和12年生まれなので、我らからすれば、同世代と思われるのですが、この5年という時間差で、世界も社会も確実に変わりつつあった、ということなのでしょうか。

・もちろん、エッセイの書かれた「時代」そのものが違う、のではありますけれど。

・調べてみたら、著者は現役でした。最近のエッセイも読ませていただきたいなぁ、と思います。

小悪魔アザゼル18の物語/アシモフ

悪魔のかかわる話、の体裁をとったショートショート集。

実際には

ヨタ公のヨタ話

であるかもしれない(可能性が高い)体裁をとっているのがオシャレ。それを聞く主人公も、原稿料だと思って飲み食い小遣いまで渡すという図式も楽しい。

話す方も聞く方も、「オヤクソク」についての暗黙の了解。ふふふ。さすがは大御所でありますね。

R.P.G./宮部みゆき

タイトルに意味あり。

・ネタバラシになりかねないので、触れるのが難しいのだが、多重構造が楽しい。なにしろ、犯人を追い詰める過程で展開される××が、実は××なのだが、取り調べる方の××からして××みたいなもんだし、そもそも被害者が××の・・・・・。ううっ、書けない。(^^;)

・それにしても作者の才能は凄い。ときどき、水戸黄門の脚本と一緒で複数の書き手がペンネームを共有しているのではないか、と思えることもある。まったく、「溢れる才能」とはこういうものを指すのだろう。タメイキ。

当代最高級の作家の手腕に酔ってどんどん読めます。絶対に損はさせない!!

読みましょう!!

折れた魔剣/ポール・アンダースン

・ポール・アンダースンのSFを読みたくて当てずっぽうに注文したら、来たのは本格のファンタジー大作でした。

・発表は1954年。指輪物語と同時期に発表された作品とのこと。

優れた物語は、優れた寓話になるという典型。北欧神話に材をとって、英雄の誕生と破滅が描写されるのですが、世界観タップリです。エルフだのトロールだの、「ファンタジー」してますが、常に本のこちら側、「人間世界」の投影を感じます。

・強欲と怨嗟を契機として、「世界」が変転していく。一度転がりだした車は、原因が消滅しても、止まらず・・・・・。

・ファンタジーは守備範囲ではないのですが、これは名作と思います。作者は2001年没ですが、このような「作品」を遺していかれた事に、尊敬と少しの嫉妬さえ感じます。

半世紀前の作品に、乾杯。

シャーロック・ホームズの愛弟子/ローリー・キング

・名高きホームズ物のパスティーシュ。短いストーリーを重ねつつ、話は緊迫度を高めていきます。

・メアリが生意気(笑)。というか、こういうキャラでなければあのホームズと伍してはいけまいからなぁ。ホームズとの運命的な出会い以降、ホームズファンに嫉妬されるかも知れない展開です。もうちょっと躊躇とかはないのか、という気もしますが、それはきっと凡人の感想か。

・パレスチナ逃避行は、後のシリーズの伏線ね。ただ敵の手が伸びてこない以上、まあさほどの緊迫はしないのがどんなもんか。

・最後の最後に、敵が単独で現れるのは、ちょーっと軽率なように思える。偽情報とか、自身の健康状態についての焦りとか、周辺事情はあるにしてもね。

・訳者の手柄か、文章表現が時代・題材・内容によく合っていると思います。作品世界の描写にマッチしていて、読者が二人と一緒に物語の中を違和感なく移動するのを助けてくれます。文体って、大きいですよね。


ワトスン博士。あの人は、いい人。(^^)

シェエラザード(上下)/浅田次郎

上手い!!

・浅田作品と言えども、打率10割ではないのですが、こと戦争関連とかになると、作者の意識の高さ深さが作品を研ぎ澄ますように思います。

・当初、律子の造形が随分唐突と感じたのですが、それさえも作者の作品設計のウチであったと感じます。

・最後の最後に、弥勒丸が華麗なステップで雷撃をかわして見せるのに泣きます。いいよねぇ、せめて・・・・。

・戦争とか貧窮とか、どうしようもない境遇の中で誇りを失わない人間を書いたなら、やっぱ浅田先生「凄い」です。これがあるから浅田作品止められませんー。

・猛烈オススメ&好き!

格闘する者に○/三浦しをん

・作者のデビュー作。

前半、読むのが辛い。文章のリズムが合わない。キャラクターに感情移入できない。が、不思議なことに200ページこ越える当たりから、リズム感が出てくる。作りながら上達しているように感じられ、なるほど、究極のOJTなのか?

・所々の文章に時々光る部分があり、確かに才能を感じる。

・ただし、この作品の全体のレベルとしてはまだまだと言えるだろう。逆に言えばこのレベルの作品から、作者の才能を感じ取ってデビューさせた編集者の存在が大したものなのだろう。

「慧眼」かどうかは、他の作品も見てから。

・人物の登場は唐突だわ、話は一直線だわ、と不満は多いものの、このデビュー作以降、作者の才能が開花していく過程をたどりたいと思うのも事実。小説、エッセイとりまぜて5冊ほど購入してみたので、また後日。

再び男たちへ/塩野七生

・「男たちへ」の続巻、の位置づけなのだが、大幅にチガウ本になっている。
そもそも「男たちへ」は花椿への連載をまとめたもので、54章を421ページ

・他方、こちらは書きおろし(?)で63章を277ページ

正直、文章が薄い。1章あたりの文字数が少ないため、「強烈」さがない。また、掲載誌から想定読者のレベルを設定できた前作に比べると、やはり焦点がボケている。

・前作の好評さに企画されたのだろうが、無理があったのではないか。

・塩野節に酔いたければ、「男たちへ」だけでいいと思います。

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結戸 要

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趣味:読書、と言いながらここ数年は読書量が落ちていました。知人の読書家に触発されて、ブログに感想を記録していこうと思います。結構節操がないので、ジャンルが飛び回ると思いますが、お目に留まれば幸いです。

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