記憶の本棚

・読書感想を中心に映像作品へのコメントなども。

ブレイブ・ストーリー/宮部みゆき

TV放映された映画を契機に手を伸ばしました。TV版は劇場版に比べてカット部分が多そうだなぁ。

幻界に飛ぶまでの描写が、戸惑うほど長い。ここまで微細に設定・描写する必要があるのか、と思うほど。しかし、物語が収束していく中で、それが

絶対に必要であったことが解ってきます。

アリガチなお気楽異世界冒険物では全然ありません。予定調和〜なお話ではないのです。なにしろ、結末近くで次々にワタルに降りかかる試練は、どの一つだって、凡百の物語ならクライマックスになって不思議でないのですから。

重い。重いけれども、きっと「道」とはこういうものなのでしょう。人生に踏み出したワタルの姿が眩しいです。


映画は映画で、尺の中で表現しようとすれば【例えばワタルの父の屁たれ具合「新車だって我慢したんだ!」ってオイ!】、適切だったと思います。原作の、異世界に飛ぶまでの描写をキッチリやっていたら、それはやはり時間配分等で破綻していたと思うし。映画は映画でちゃんと少年の成長物語になっています。

それでも、是非この原作を読んで欲しい、と思います。


彼らの人生に、幸あれかし。





誤解された歎異抄/梅原 猛

・親鸞といえば悪人正機説、というのは恥ずかしながら私の認識でした。日本中世史専攻ったって、個々の著作を読みふける学究の徒であった訳でもなく、所詮は受験知識でしたから。

・この本は、歎異抄が体系的に親鸞の思想を述べたものではないこと、親鸞の思想の主軸は二種廻向と真仏土・化身土にある、と述べています。

・教行信証だってもちろん読んだこたーないので、この辺、新鮮でした。二種廻向ってのは、如去・如来だな。

・真仏土・化身土ってのは少々苦しい概念かと。名号(南無阿弥陀仏)の功徳が無限だから、一度でも唱えれば極楽浄土へ、となれば、地獄に落ちない以上、そりゃ浄土をランク分けしなきゃならんよなぁ。ちょっと苦しくはないか?

・とは言え、人生を掛けて衆生済度の道を模索した経緯を馬鹿にしていい筈もないです。

・しかし「絶対他力」だから自力は認めないというのは、教義突き詰めればそうなっちゃうとは言え、危ない方向に転がる可能性もある訳で。

・久しぶりに仏教思想について触れたいい本でした。

ぼんくら/宮部みゆき

・ううっ、もう皆様ご存知のとおり、私、宮部作品には無条件に手が伸びます。本作も期待を裏切らないどころの話ではありません。いやー、こんだけ立ったキャラが揃って謎の話が展開されるんですから、面白くないはずがない。

・平四郎と弓之助、政五郎はそれぞれに主役勤められるよなぁ。三人それぞれのシリーズに他の二人がちょろちょろ出演したりするなんて想像すると、読みてー!!

・宮部作品の特色は、まずなんと言っても人物造形の妙。ここがきちんとしているから、話の展開が重厚になり、読み手が引き込まれるんでしょう。

・家主の手の込んだやり様の背景には、昔買った恨みが、という背景と、殺された筈の人物が実は・・・それは・・・、という辺りにやや理屈優先の感なきにしもあらず、ですが、それをもって瑕というのは無粋でしょうねぇ。

・平四郎の奥方が、賢い!

・で、弓之助君のこの先が気になるのであります。先生、次作はぁ?

嘘をもうひとつだけ/東野圭吾

・新作家を開拓しようと購入。

・むー、短編集なんだけど、登場人物が立ってないというか。彼なり彼女なりが、なんか書割みたいなんだよな。彼や彼女でなく、別人でもいいやって感じ。狂言回しの加賀にすら実在感が無い。殆ど「死神かあんたは」という非人間感。

・いやらしいほど犯人を追い詰めるくせに、最終話だけアレはないだろう。加賀ならごみ袋、絶対確保してるくせに。これで、友の病室から出た後で、確保しておいたごみ袋を処分する描写でもあれば、人間味が出たのになぁ。

・作家の評価に短編集1冊ではアンフェアだろうから、評価の良さげな長編も1冊読んでみましょうかしらん。

地球帝国秘密諜報員/ポール・アンダースン

・「SFには、サイエンス・ファンタジーの意味もある」とは、高校時代に読んだSFマガジンに載っていた言葉だったと思う。

・超高速航行、広大な宇宙と覇権争い、多様な異星人に美女と戯れる腕利き諜報員。SFというジャンルが歩み始めた時代の要素を満載したこの作品は、また「SFはサイエンス・ファンタジー」でもあった時代の空気を呼吸させてくれる。

・要素だけなら只のスペオペだろう。だが、基底にある「帝国の黄昏」感が、作品を締めていると思う。

・巻末、キットに別れを告げて立ち去るフランドリーの格好いいことと言ったら。キットは、フランドリーの心を受け止めるに十分聡明な女性だから、この別れの美しさが際立つんだよなぁ。

・古き良きガチャガチャした宇宙で、長い夜の到来を確信しつつ、全てを投げ出すことを選ばない主人公と、つかの間同行できる、気持ちいい作品です。

・それにしてもチャイヴズ、君はなんて有能なんだ!(^^)

造物主の掟/J・P・ホーガン

昔読んだと思うのだが、すっかり忘れていた。内容は覚えていなくても、読み進むうちに展開は判ってくる。しっかしホーガン作品は、どこまでも

「正義は勝つ!!」

「知恵と勇気が未来を開く!!」



のである。気持ちいいったらありゃーしないってなもんですね。

稀代のカタリの主人公とそのチームが、土星衛星タイタンで機械生命体の社会と出会う。一方で地球では、未知のテクノロジーを独占せんとする勢力が・・・。

なにしろ主人公チームが有能かつ詐欺師の集まりっちゅートンデモ集団なのが楽しいです。主人公が抱いていたコンプレックスが、昇華していくのと、事態の展開がシンクロして、いやぁ、

ホーガンっていいなぁ!


楽しい読書をする、という点で、ホーガンのSFは外せません。難解なSFは苦手、という方に是非にもオススメしたいです。




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結戸 要

結戸 要

趣味:読書、と言いながらここ数年は読書量が落ちていました。知人の読書家に触発されて、ブログに感想を記録していこうと思います。結構節操がないので、ジャンルが飛び回ると思いますが、お目に留まれば幸いです。

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