記憶の本棚

・読書感想を中心に映像作品へのコメントなども。

黄色い目の魚/佐藤多佳子


参ったー!


・話題になっている「一瞬の風になれ」の作者、さて作風はいかに?と手にした本。天邪鬼なので、「一瞬の・・・」は後回しにしたのだが。

・いや、参った。引き込まれた。この一作でファンになってしまったか、と思う。

切ない。二人の一人称で展開される世界。彼と彼女の目に映る世界の中で、不器用にお互いを認識していく過程が、これほどリアルに、響いてくるとは。

・なんだろうなぁ。こういう季節、欲しかったなぁ、としみじみ、思う。

・最後に、一駅分の砂浜を走って、木島が村田にたどり着く。もう心の中でボウボウ泣きましたな。

自分の中に、捨てられない若さを抱えている本読みさんに、オススメしたい作品です。


好き!


極道放浪記2 相棒への鎮魂歌/浅田次郎

・しばらく取っておこう、と思ったのですが1が面白くて手が出てしまいました。

・後半、第十二犯あたりから小説色が強くなりますが、それはそれとして相変わらず面白いです。

・基本的には実話を再構成したもののようで、後の小説家・浅田次郎の基礎となる話運び、文体が感じられます。

・きっと、小説っぽくしなきゃ書けない、

ヤバイ真相

なのでしょう。

・小説色が強くなる本巻は、前巻の面白さと色合いが異なってきますが、そりゃ命あっての物種ですもの。

・現日本ペンクラブの理事が、このような経験を経てきたというのは、心強いものがあります。

極道放浪記1 殺られてたまるか/浅田次郎

エッセイ集、じゃないよなぁ(笑)。

強烈です。かねがね

「度胸千両」

の経験があると自白(笑)していた作者の自叙伝。もちろん演出脚色はあるでしょうが、その脚色加減が恐らく「薄味にしてありますよ」的なのだろうと思わせられるところがコワイ。

後の浅田作品のモトネタがゴロゴロ出てきて、これがまた「創作」じゃないだけに恐ろしいというかなんというか

こういう話は読んで笑うだけにしておきたい、と 痛 感 いたしましたです。

浅田ファンに強くオススメします。

猿丸幻視行/井沢元彦

名高き昭和55年の江戸川乱歩賞受賞作。和歌の暗号と古代史の謎とを絶妙に配した名作との誉れ高い作品です。

今の時点では、古さを感じる作品だが、なかなか楽しい。女性キャラの描写が浅いとか、薬で意識が過去に飛ぶという設定は余計、だとか、暗号の専門家使い捨てですか、とか

8世紀初頭に歴史から消された皇子が

(真贋不明とは言え)三種の神器付で前方後円墳

に葬られているの?


とか、東条英機に南方熊楠とは大盤振舞も過ぎる、とか色々思うところは(結構)ある。

謎解きの面白さは確かにあるのだが、小説として、和歌の謎解きと殺人の推理と話の筋立てと人物描写とのマッチングについては、バランスが悪いな、とは感じます。

この作品のメインは、和歌にこめられた謎の解明過程にあって、古代の皇位継承争いはサブですね。殺人事件に至っては、もう申し訳?

異教狂いの息子と銭ゲバの孫をブッコロして謎を謎のままあの世に持っていこうとした爺さんの気持ちは、理解できるなー。

信夫が悦子との約束を守って、真相を葬った、という結末はとても好みです。この部分の美しさで、「ま、途中の引っかかりは帳消しにしましょう」、というところでしょうか。

猿丸村の祭りは、何かに似ていると思ったら、毛利家の正月(秘密)行事だったかー。

香乱記/宮城谷昌光

秦末の乱期を生きた男・田横の話。

宮城谷氏の文章は漢語を多用して格調があり、これが主人公の成長とあいまって絶妙な世界観を演出します。個人的に大変、好みであります。

主人公の田横は正義の人として描かれ、苦難の中で周囲にも恵まれ、幾多の困難の後に斉王となるのですが。

宮城谷作品の面白さは、終盤に入るまでの人物の心理描写・創作にあると思います。その故に、締めくくりに入ると急速に主人公が碑文・史書の中に戻っていくような錯覚を覚えます。歴史に題材をとる以上、歴史を変える訳には行かないとはいえ、ここらが辛いと感じるところでしょうか。

終盤、韓信に歴城を奪われるがあっけなさ過ぎる気がします。史実はそれとしても、描写において妥当であったでしょうか。漢の卑劣な違背によって、以降斉は追い詰められ滅ぶのですが、「徳による治世治民」とは「無能」でできることではないのではないだろうとも思います。

もっとも、疑った挙句に騙された

では 阿呆丸出し になりますから、この選択しかなかったか、とは思います。

それまでまるで影の薄い曹参が最後を締めくくるのがちょっと腑に落ちませんが、終盤前までは楽しく読めました。

色々書きましたが、それだけ宮城谷作品は好みだということですのでご寛恕ください。

落日燃ゆ/城山三郎

広田氏が極東軍事裁判で弁解をしなかったのは何故だろう。

著者は、自ら罰を受けることで天皇の責任を回避した、というようなニュアンスなのだが、どうも納得しかねる。

そもそも極東軍事裁判なるものは、要は戦争の延長であって、通常の「裁判」ではないのから、そもそも弁解など無用という覚悟ではなかったか。外相首相として戦争を止めなかった、という訴追が通るなら当然その延長として天皇の責任こそ問われかねない。だから天皇の責任を回避する上では、外相首相として罪に問われることはリスクが高い筈だ。

多分、戦争で失われた無数の命に思いを致した時に、一人生き残る事を恥じたのではないのだろか。

是非はともかく、こんな政治家・官僚ばかりなら、

わが国は素晴らしい国になっただろうに

と思う。現実には(十数字削除)なヤツばかりが幅を利かせた結果、こーんな国になっちまってる。

官僚を輩出する母体は国民だし、政治家を選出するのも国民。

だめだぁ、こりゃ。


逆説の日本史1古代黎明編/井沢元彦

大国主命の話が面白い。出雲政権が大和政権に滅ぼされただろうことは明らかだが、出雲大社の祀り方の徹底さは初耳。注連縄の逆の張り方といい、そりゃ明らかに

怨霊封じ込め

ですねぇ。ここいらの情報があまりポピュラーではないところに、興味深いものがあります。ま、大社側だって、「縁結び?いや、ウチは怨霊封じの社です」たぁ言いたくないわなぁ。

「わ」が日本の原理であり、日本が「わ」国でだから「大和」とかいてヤマトと読む。ふむふむ。

古代天皇家と朝鮮半島との繋がりは、神話にもそれとなく伺われるところですが、これだけ歴史が流れると、イギリスとアメリカの関係みたいにはいかんっちゅーことですなー。むしろフランスとイギリス、か。

宇佐八幡の話、言われてみれば伊勢神宮ではなく宇佐八幡に皇位継承の伺いを立てたというのも重要な話。個人的には邪馬台国東遷説なので、なるほどなるほど。

万世一系などと称された天皇家ですが、なあに、皇位の争いは驚くほどあって、武烈(仁徳系)と継体の断絶、欽明と安閑・宣化の対立、有名な壬申の乱等等、近くは南北朝という混乱。まあ、ウヨク方面妄想狂さんは聞きたくないことのオンパレード。それでもまあ家系「図」としてはつながってるって?そりゃほとんど「宗教」ですな。

天皇陵についはまあ、こりゃ後世に任せるしかないかと思います。明らかに異常な状況なのですが、とにかく現状維持ってことは、少なくとも保存はされる訳ですからねぇ。

後ろのほうのハングルの話とかも面白い。朝鮮にも女王っていたんだー。日本人も朝鮮の歴史なんか本当に知らないものなぁ。著者は朝鮮の文化面について苦言を呈しています。当時から状況は変わってきているのでしょうか。

さあ、シリーズものなので、この先が楽しみです。すっごく!


 | HOME | 

Calendar

05 | 2007-06 | 07
S M T W T F S
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

Appendix

結戸 要

結戸 要

趣味:読書、と言いながらここ数年は読書量が落ちていました。知人の読書家に触発されて、ブログに感想を記録していこうと思います。結構節操がないので、ジャンルが飛び回ると思いますが、お目に留まれば幸いです。

DTIブログポータルへ
このブログを通報
Report Abuse
利用規約

Monthly

Categories

Recent Entries

Recent Comments

Recent Trackbacks